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フィクションは現実には勝てない

映画「あなたを忘れない」を見てきた。

心配していたほど、ロマンス色が強くなくて、少しほっとした。
決して悪くはない出来だったと思う。
最後の方の「事故」のあたりで、会場内のあちこちから、すすり泣く声が聞こえたが、私は残念ながら泣けなかった。
その理由は、「現実の方が重い」からである。

映画自体は、事実を縦糸に、フィクションを横糸に織り込みながら、淡々と綴っていて、過度に劇的な部分をつくらなかったところに好感が持てた。
その作り方は、方向性としては正しいと思う。
難点を言えば、現実のスヒョンくんがベースにあるために、ついついスヒョンくんが持っていた男らしいカリスマをテソンくん扮するスヒョンに求めて、物足りなく思ってしまうことと、一度めげて釜山に帰ったスヒョンが、どのような思いをかかえて釜山に戻り、どのように考えて再来日したかがわかるシーンが足りなかったことだろう。
その2点が克服できれば、この映画の完成度はもっと上がったのではないかというのが、正直な感想。

そうは言っても、この映画は決して失敗作ではないと思う。
この映画が目指しているところは、おそらく、「芸術作品」ではなく、スヒョンくんという人物がいたことを広く知ってもらい、みんなの記憶にとどめること。
そして、みんなに命の大切さと死の重さについて考えてもらうこと。
その意味では、決して製作者の解釈を押し付けず、淡々と実際にあったエピソードを綴った作りにしたことは、正しいのではないかと思う。

大ヒットするような「娯楽大作」でもなければ、「芸術作品」でもない。
けれど、この映画を作った人たちの想いを、できるだけ多くの人たちに知ってもらいたい。
李秀賢(イ・スヒョン)という、普通の青年が事故の際にとった行動の意味を、できるだけ多くの人に考えてもらいたい。
その意味で、できるだけ多くの人に見てもらいたいと思う。
話の筋は難しくないので、見る時は肩の力を抜いて、気楽に見て欲しい。
でも、その後で、命とは何か、それぞれに考えて感じてもらいたい。
そのためにも、多くの人が映画館に足を運んでくれること、それから、できる限り長く上映されることを祈っている。

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